掲題の二冊の本は、昨年末頃より本屋さんでよく見かけていたのですが、手に取らずにいました。

その二冊が、3月頃に新聞の書評で紹介されました。その書評を読んで興味が湧き買い求めました。

『対馬の海に沈む』は、JAの中でも全国的に断トツの営業成績を続けてきた男性が、車ごと海に沈んだことから始まるノンフィクションです。巨額の横領事件の実態を地道な取材を積み重ねて事件の深層に迫った作品です。

過去にも農協の闇について書いたノンフィクションは読んだことはあるのですが、同書は、実際の事件からヒントを得て書かれた小説のような感じがしました。

『ボーイング強欲の代償は』は、1998年にマクドネル・ダグラスを吸収合併したことを契機に統治構造が変わり、ひたすら株主利益を追求し、経営者が破格の報酬を得る会社へと変貌し、巨額な技術開発投資や安全性への投資が減らされて行く過程が見事に描かれているノンフィクションです。

その必然の結果と言うべき連続する2件の墜落事故から描かれています。

また、同書はアメリカのフリードマンドクトリンによる株主資本主義の構造的な問題を見事に描いています。なお、著者はアメリカ在住の経験も長い新聞記者です。その都度キーマンへのインタビューも実施されていて、その取材力も見事です。

同書は、ボーイングのことを取り上げていますが、日本国民への警告の書だと思いました。エズラ・ヴォーゲルが米国民への警告を目的に書いたとされる『ジャパン・アズ・ナンバーワン』のように。

多くのビジネスマン及び経営者に読んで欲しいと思いました。また、地方公務員の方々、教職に就かれている方々、学生の皆さんにも是非読んで欲しいと思いました。

著者が描く今後の記事やノンフィクションに注目したいと思います。