漱石の「こころ」は日本の名作の中で最も読み返した作品です。それには理由があります。
高校の1、2年生の時の国語の先生が、「40代になったらもう一度読み返して欲しい。感じ方が違うものがある」と仰ったからです。私はその言葉に忠実に40代になってから読み返しました。
最後に読んでから20年以上の歳月があり、新たな発見もありました。また、私も親になり、感じ方にも違った面がありました。名作は何度読んでも飽きないし、時代の移り変わりにも色褪せないと実感しました。
私の母校の高校では卒業から30年が経った年に、大同窓会の幹事をするルールがあって、私も参加しました。その同窓会で先生と27年振りにお会いしました。
先生に「こころ」を読み返した話をしました。褒めてもらえるかなと思ったら、先生は「60代になったら、もう一度読みなさい。また違ったものがある。」と仰いました。
先生の実家はお寺でしたので、「死」に対して日々向き合ってこられたのだと思います。
今週の「週刊東洋経済」の特集は「混迷の時代を生き抜く武器としての名著」です。その特集の中の、「『実用』重視で迷走する国語教育 漱石『こころ』を学ばない高校生」の見出しのページが目に留まりました。
十代のうちに名作に触れる機会が減ることは、とても勿体ないことだと思います。
今回の独り言を書いていたら、5回目を読みたくなりました。